Red Bullは27日、走行するF1カーを撮影できるFPVドローンを開発したとして、その映像を公開しました。高速走行するF1カーの後ろを追従しながら、コース1周を通して撮影した映像が収められています。早速SNSや各種ニュースで話題となっておりますが、このドローンは果たして作ることができるのでしょうか!?この映像をもとにどんなパーツや製作の工夫があるかなど考察したいと思います。

ファーストステップのFPVドローン試作

まずは、プロトタイプとして、卵型のドローンでテストが行われました。最終タイプに比べるとやや小さいです。パイロットはFPVゴーグル(アナログゴーグルのFatsharkを使用)をかけて、プロポ(Radiomaster BoxerにCrossfire TXを装着)で映像を見ながら操縦するFPV飛行です。このような超早い高速移動を行う場合にLOS(Line of sight、目視飛行)は不可能なのでFPVドローンで行う必要性があります。

プロトタイプを製作したのは「DUTCH DRONE GODS HQ」というオランダで映像制作などを行うチームが担当したようです。お部屋を見る限り、FPVドローンの製作や3Dプリンタを日常的に使用していることが伺えます。

我々がよく使用する撮影用のスピードタイプのドローンは時速100km-150kmですが、軽量化して高回転モーターにすることで、なんとか時速200kmくらいまでは出すことが可能です。この映像にも出てきますが使用していません。

試作1つ目の段階のテスト対決においては、ストレートのみでF1カー側に改善の余地ある仕様だったものの、時速300kmを超えるスピードをFPVドローンが叩き出し勝利しています。ただし、このコースは直線で短く、実際のフルマップのコースに耐えうる(おそらくバッテリー的に)ものではないため、この後行う本番対決に向けて、さらに製作を最適化していきます。

改良された3Dプリンタ製のFPVドローン試作機2台目

2台目のプロトタイプでは、3Dプリンタで全体を覆っており、初代より背が高くなっています。
ドローンの形状を見ると5インチタイプのプロペラでモーターは2207サイズ近辺のものを使用しているように見受けられます。

テストフライト直後に煙が吹き出しショートして発火しておりました。飛行直後なので電流負荷が原因かはわかりませんが、おそらくは接触不良などだと推測します。
この映像で見えるドローンの構造を見ると、ESC(Fettec 65Aのように見える)が最下部に存在しているようです。おそらくその上にFlight Controller(FC)を搭載し、モーターの高さとFCの高さを合わせているものと思われます。

またプロペラは二枚ブレードを使っています。サイズは6インチほどでしょうか。最終機体ではよりピッチの深いものに変わっていますが、3枚や4枚ブレードよりも2枚ブレードのほうが最高速が出やすく効率が良いという利点があります。クイックに動く機動性は減りますが、最高速を出すのであれば2枚ペラです。下のモーターを見ると2308モーターらへんでしょうか。8Sバッテリーなので、おそらく1000kv-1500kv※当たりのものをチョイスされていると推測します。

※メーカー発表 →最終的にはT-Motor F80pro 2408/1900kvを使ってるということでした!かなり高KV!

その後、テストフライトをしますが時速100kmほどでESCの温度が100度を超えてしまいます。ESCの温度は通常140度くらいまでは耐えられるものの、このままだと熱停止してしまう可能性があるため、ヒートシンクを搭載して熱拡散をしていました。(後半のビデオで写っている)

右下のS100のようなマークはスロットルポジションであり、100ということはフルスロットルで限界までモーター回転させていることを表しています。また、左にある153.30Aという数字は電流量を指しています。4モーターなので、時速350kmの際には1つ当たり40A程度を使用しているようです。ESCが65A許容できるものが大半なので、まだ余裕がありそうです。熱問題を無事解決して、飛行性能を改善するために、テープで穴を塞いだりしたのではないでしょうか。

離陸後のSTAT(統計情報)を見るとMIN Batteryが24.23Vなので、おそらく8Sバッテリー(定格電圧3.7V x 8 = 29.6V)を使っているのではないかと思います。またMAX CURRENTが246Aなので、1モーター当たり61Aまで使用していることになります。結構な負荷なのでドキドキします。ちなみに電圧を上げればその分電流量は相対的に下がるため6Sを使うとESCの許容電流料を超えてしまうのではないかと思います。

この後は、試作2台目でのF1カー対決です。
飛行後に映像が受信不可能となりGo Homeがかかり墜落(ややソフト目に)してしまいました。

この時、内部が一部見えましたが、GoProをセンサーとレンズだけ取り除き、FPVカメラとは別に記録用に搭載していることがわかります。

赤い小さなカメラがFPV用のCCDカメラで、上の黒いレンズとヒートシンクが貼ってあるのがGoProです。横に出ている黒い2本のアンテナは、プロポの電波を受ける受信機でCrossfire Diversityという製品を使用しています。横を支えているのはカーボンフレームで合成を保つためには必須です。

ここまでの情報をまとめると、ドローンの機体構造としては
・最上部にFPVカメラとGoProと小型のGPSセンサー
・中腹に最も重量のあるリポバッテリー
・下部にはFC、その下にESC
・FCと同じ高さ近辺にモーター
となっていると思います。かなり重心位置が上に来ているため、クイックな動きになりがちで機体が不安定になりやすいので、なるべく重いものを下に寄せているはずです。

時速300kmを超えると、乱気流が発生したりするなど機体の姿勢が乱れることがあります。映像のロスト原因はわかりませんが、振動による電気系統の乱れや、過電流により映像機器への電圧が正しく回らなくなるなどの理由が考えられます。どのようにして解決したかは不明ですが、2回目のテストでは無事に飛行することができたようです。

いざ、実際のコースで走らせると時速310kmを超えるスピードで周回をすることができました。しかし、この後の本番対決に向けてより空気抵抗を改善したり、信頼性を上げるために工夫は続くのでした。すごい!

ついに完成!時速350kg超えのRed Bull FPVドローン

空気抵抗を改善するために、3Dプリンタで作成した外側のケースなどが改良されました。
F1の技術にも空気抵抗を改善するために数多くの工夫がなされていますが、FPVドローンにも同じように材質を変えて改善が行われました。(材質は不明だが、薄いカーボン樹脂のように合成があり、表面に滑らかな加工がなされている様子)

これで世界で最速のFPVドローンが出来上がりました!
さて、いよいよ時速300kmを超えるRB20との本番対決です!

飛び立った後の時速115km時点では、ESCの温度も、電流値もかなり安定しています。

この後、3分弱ノーカットでF1カーをトラッキングし続ける映像が流れ、時速300km近くでドローンが負い続けたことがわかります。あっぱれ!

今回の時速350kmのFPVドローンはテストや製作に1年がかりだったと思いますが、ここには見えないいろんな苦労があったのだろうなと想いを馳せます。地面摩擦の無いドローンは空気抵抗が鍵となります。またプロペラの下側に空気が掻き出されるため、形状としてロケット型にするのがもっとも抵抗が少なくなり過去のギネス記録でもこのタイプのものが製作されています。

ちなみに制作コストについて言うのは野暮ですが、相当なコストがかかっている!と思っていらっしゃる方が多いのでおよその金額感でいうと機体自体は20万円ほどでできるのではないでしょうか。(特に時速300kmを超えたプロトタイプ2)もちろん数々の試作機や制作人員にかかるリソースは除いてです。決して数千万円というレベルのものではなく、既存のパーツの組み合わせてできてしまう構造のシンプルさと汎用性の高さこそが、ドローンがここまで普及した大きなポイントだと私は思っています。

それにしても素晴らしいチャレンジでした!パイロットの方々もお疲れ様でした!素晴らしい!私もF1カーを撮影したことがありますが、当時使っていた時速150kmのドローンでは全く歯が立ちませんでしたが、このようなチャレンジを見ると、ぜひトライしてみたくなりますね!F1カー対決は彼らが征したので、ぜひ日本が誇るリニアモーターカー(時速500km)でチャレンジしたいと思います!
(>>>>JRさん!)