こんにちは!YDLのスタッフの鈴木です。

突然ですがみなさん、ご自身で「あんな映像つくれたらなぁ」とか「こんなの撮影できたら面白いのに」とドローンを使っても、使ってなくても思ったりしたことはありませんか。今回YDLでは「宅配ピザFPVドローンの機体製作」を行いましたのでその制作過程をご報告いたします!

ちなみに今回の機体製作から撮影までなんと半日で行っています。機体の知識や、製作技術、3Dプリンタや撮影技術を正しく理解し組み合わせることで、ご自身の面白いアイディアをすぐに形にすることができます。しかもその日のうちに。ないものは自分で作ってしまえばいい。必要なのはフレッシュなアイデアだけです!

今回は「宅配ピザ」の他にもせっかくなので「コーラ」を運んでくれるFPVドローンも合わせて作ってみました。

完成動画

まずは実際の映像をご覧ください。今日は先週までに出たアイデアの中から数種類テストで製作し、実際に飛行テストと撮影を行ってみました。DJI等の機体ではできない映像表現と思いついたアイデアをすぐに形にできるのがFPVドローンの新たな魅力です

お昼にピザを配達してくれる「配達ピザFPVドローン」

喉が渇いてコーラを届けてくれる「宅配コーラFPVドローン」 

制作の流れ

1.アイデア出し

アイデアを自由に出し合いましょう。今回は最初に「ドローンで何か食事を運びたい」とのお題がありましたので、ピザとコーラに決まりました。他にも"うどん"や"レッドブル"、スプレー缶、AEDなど様々なものを今後搭載予定です。

2.機体サイズ選定

ペイロードを加味して、適正な機体サイズ、モーターサイズ等パーツの選定します。今回は4インチで2207モーターを選択。各プロペラにダクトを取り付けたため、若干プロペラを削ることになりました。デジタル機を製作しゴーグルの視認性を確保し、フレーム上部のプレートをアタッチメントをつけれるように3Dプリンタを使って新規に製作しました。ダクト効果を用いることで、ペイロードは1kgまで搭載可能。ただし超高回転仕様なので短時間飛行しかできない想定です。当然FPVでリモート操縦できる仕様にしています。

3.アタッチメントの製作

ドローンに乗せるものを固定するのに必要なパーツをCADデータ作成し3Dプリンタで出力します。今回は機体のフレーム上部のプレートごと寸法を測り制作しました。

4.配送用ドローン実機製作

FCはFoxeerのH743とESCはT-motorの60Aを使用しています。とても調子がいいです、H743は。ESCはBLHeli_32の最新ファームを使用しています。BLHeli_32では32bitで設計されていて、8bitのプロセッサを使うBLHeliやBLHeli_Sよりも高いパフォーマンスを発揮し高度な機能も使えるようになります。モーターや受信機などの配線を終えて、BETAFLIGHTを用いて設定チューニングを行います。また、今回はPOV用にInsta360 Go2をドローン後部に取り付けることで、ピザを運ぶドローンとその全体の視点を撮影しています。

5.テスト飛行

ホバリングや機体のバランスを確認します。今回は、重心位置の変動によりYAW方向のブレと急上昇が目立ったのでPIDを全体的に減らしYaw軸のP値を大幅に減らしました。さらに改良の必要があれば上記2〜5を最適になるまで繰り返します。

6.テスト撮影

テスト撮影を行い、映像データを確認します。カメラの設定、不要なブレがないかや、カメラのアングル等を確認します。また機体に異常がないか最終確認を行います。今回の機体は超高回転仕様なので、モーターの熱がとても気になりました。いけなくはないが、無理はする必要はないので、最大飛行時間を3分間と決め打ちでルール設定しています。

アタッチメント製作1 ピザ編

ピザに関しては宅配ピザの箱サイズに合わせたトレーを製作して機体に取り付けています。重心を機体の中心に持ってくるように、下部に取り付けたバッテリーの位置、向きを調整し、上部に取り付けるピザとお盆とのバランスに一番注力しました。バランスが取れていない機体(重心が前のめりなど)では当て舵も必然的に多くなりますので操縦しずらい機体になってしまいます。通常のドローン製作の際にもバランス感は最も重視する箇所でもあります。

また、そのまま機体にお盆を乗せてしまうと機体からのプロペラの空気の通り道を塞いでしまうので、トレーまでの高さを少し出しています。トレーの表面には念のため滑り止めのシートを貼ってピザがずり落ちないように加工がしてあります。ピザの重量を考えると、アタッチメント部分は軽量にしたかったので、今回は一部に発砲スチロール等を使用しています。

アタッチメント製作2 ペットボトル編

ピザ同様にアタッチメントは機体のトッププレートに合わせてCADデータを制作し、3Dプリンタで出力しています。注意した点は、飲み物を載せた時のバランスです。機体の揺れでバランスを崩さないように数種類パーツを事前に用意し、重心が真ん中に来るように飛行直前まで調整しました。カップホルダーのような形状にしつつ、カメラから飲み物が見えるように、またラベル等もきちんと見えるようなホルダーにしました。缶とペットボトルを用意しましたが、試した結果今回はペットボトルの方が安定してましたので採用に至りました。

3D プリンタで出力中

改善点

  • 4inchを選択したが少しパワー不足だったため、機体を5inchにサイズアップしてもう少しパワーが出る仕様に変更予定です。
  • アタッチメントの形状の調整してホールド感の向上を図ります。少しだけ底部を掘りペットボトルの底が収まる仕様に変更する。
  • 3DプリンタのフィラメントをTPUよりも硬質なABSなどの素材に変更することで土台の安定を向上させ、それに伴い操作性も向上させます。固定具の一体化で着脱をより簡単に変更。アタッチメントの横揺れが激しく、今後はプレート一体型に変更予定です。

    上記の改善をすることで機体がさらに安定化し飛行がもっと自由にできて、さらに面白い表現をするのに適した機体が出来上がると思います。

まとめ

今回は「宅配ピザ」、「宅配コーラ」のFPVドローンの制作の舞台裏を書いてみましたが、いかがでしたでしょうか。

現在FPVドローンの場合、ご自身のアイデアに合わせた機体を簡単で素早く作り、それを映像作品としてその日のうちに作ることも可能です機体自体はごくシンプルな構造をしており、必要な知識さえあれば数時間でご自身でも作れるようになります。今回のように機体に3Dプリンタでアタッチメントをつける工程がありますが、特に難しいことはしていなく、基本的なCADを描くこと自体は数時間勉強すれば誰にでもできるようになります。

実際に今回は数種類のアイテムを乗せられる機体の製作・撮影までをわずか半日で行うことができました。使っている機体はたった1種類です。機体に取り付けるアタッチメント製作することで、アタッチメントの交換だけで異なる形状、サイズのものも簡単に載せ替えできるように工夫することで機体制作の時間やコストも削減できます。

無いものは自分で作ってしまって、新たな表現方法をどんどん自ら試してしていく」。そんな面白いことができる現在はとても楽しく素敵な時代に突入していると思います。挑戦や失敗も沢山しますがそこが一番楽しい部分でもあります。

YDLの「L」はLaboratory (実験室、研究所、ラボ)を指しています。YDLでは通常のFPVドローンの飛行技術を訓練するだけのドローンスクールとは違い、まだまだ可能性に満ちたドローンの活用方法を自ら研究開発しています。機体を製作し、飛行試験を繰り返し行い、機体のブラッシュアップをし、ドローンを使った新たなサービスへと展開できるように日々ドローンと向き合っています。研究といっても実際は普段の会話の中から出てくる面白いアイデアや、まだ見たことのない演出方法など自由にアイデアを出し合っています。そしてそれらに合った機体を自分たちで設計し製作して、プロモーション用の撮影も自ら行います。

YDLでの講義には飛行技術の習得以外にも、機体製作や映像制作、営業ノウハウ等がカリキュラムに標準で組込まれています。そして受講生は卒業後にはFPVパイロットとしてだけではなく、ドローン演出の提案営業や、クライアントの課題解決を踏まえた機体制作を行えるようノウハウや環境設備をYDLは整えています。

今後も面白いアイデアをどんどん形にしていきます。随時新しいアイデアやTipsを共有できると思いますのでYDL公式Twitter, YouTubeをフォローよろしくお願いいたします。
みなさんのご意見もお待ちしております!

それでは今回はこの辺で。
次回もお楽しみに!